天然那智黒石 猫印硯工房
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硯の選び方


   
   ★お知らせ★

   「 商品一覧〜硯〜 」 に掲載の硯につきまして

   タイプ別に説明したページを作りました。

    こちら( 「硯の分類」のページ )  をご覧ください。     

 



どんな硯が「いい硯」なのか、高価であればそれだけ良質であるといえるのか、
硯選びも難しいものです。 私には よそ様のことはわかりませんし、まして
中国古硯など、美術品的な価値のついた硯については まるで門外漢ですので、
ここでは自分で作っているものを中心に、一般的な実用硯について述べてゆきます。


                              (2018年 8月28日 更新)

1.好み

   基本的に、使われる方の お好みに合うかどうかが、とても大切だと思います。
  見た目で気に入って、手にした感触も心地良くて、つい触っていたくなるような…
  そんな硯と出会っていただきたいです。
  インターネット上では、実際に触っていただけないのが残念です。  店頭などで
  お選びになる際には、可能でしたらお手に取ってご覧ください (ただし、墨を磨る
  部分に手の脂などがつくと、墨が磨りにくくなり、洗い直しが必要となります。 
  また、爪が触れると、白く跡が残ってしまい、やはり洗い直しが必要となります。
   ご覧になる際には、ご注意ください)。

  ☆ 「陸を爪で引っかいて、白く跡が残れば良く磨れる硯である」と言われることも
   あります。 試みに、天然那智黒石を、墨が滑ってしまうくらい磨いてから
   引っかいても、爪跡は残りました。 この方法では判別できないように思います。


2.墨との相性

  那智黒石製の硯は、「墨の下りが遅い」「なかなか磨れない」と言われてきました。
  確かに、ザクザクと早く墨が磨れる、という感触ではないかと思います。
  けれども、例えば下に紹介した墨を使用しますと、墨の吸いつきも良く、
  なめらかな磨り心地をお楽しみいただけます。 
  少量の濃く磨った青墨を水で薄めて書きますと、にじみがとてもきれいですし、
  もちろん濃墨のままでもお書きいただけます。
  心を静めながら、ゆったりと磨っていただきたいです。

  天然石の石質(硬さや色、鋒鋩の強さ・細かさなど)は、産地によって様々です。
  また、同じ山から採った石であっても、採った場所などによって一様ではありません。
  同様に墨も、産地・製造所・銘柄や製造年、保存状態などによって、その種類の
  多さは無数といえるほどです。  さらには、お使いになる筆や紙によっても、
  書き心地や仕上がりには大きな差が表れます。
  どんな組み合わせを相性が良いと感じるのか、どのような作品に仕上げたいのか。
  使われる方のお好みも大きく関わってきますので、実際にいろいろお試しになって、
  お気に入りの組み合わせを見つけていただければ、と思います。

  当工房の硯は、陸の感触を確かめるために必ず試し磨りをしております。
   ご参考までに、磨り心地が良好、と感じた銘柄は以下の通りです。

    墨運堂・蘭奢待 (青墨・平成9年造)、
    墨運堂・青龍胎 (青墨・平成7年造)、
    呉竹精昇堂・南都青松煙 (松煙墨・製造年不明) は優、

    古梅園・茶墨 (顔料使用・製造年不明)、     
    古梅園・紅花墨(三ツ星) (油煙墨・平成11年ごろ造) は良、
      
    呉竹精昇堂・妙煙翰墨自在 (油煙墨・平成8年ごろ造) は可。 …のように思います。

   スーパーで買い求めた、学童用らしき一本500円の墨は、磨り心地・早さ共に
   お薦めのできないものでした。


     ☆お客様から教えていただいた、相性の良い墨
         呉竹精昇堂・青墨 絵てがみ(平成14年造)
         呉竹精昇堂・特選青墨三号 (製造年不明)
         古梅園・蒼苔(松煙墨)    (製造年不明)


     ☆2010年11月に、奈良の錦光園さんで求めた
         「国産純松煙墨 天昇龍」
      旅の思い出も含めて、心地よく使わせていただいております。


     ☆2012年9月に通販で購入した、三重県鈴鹿市産の墨

          進誠堂 「樹」(「商品一覧〜硯〜」の写真に写っています)
       なめらかに磨ることができ、ほんのり、きれいな緑色が出ます。

     ★2016年4月、小ぶりの硯をお求めいただいたお客様から
     「問題なく磨れた」「なめらかで良い感じ」と、下の3種の青墨を
     教えていただきました。

          墨運堂・青燭精  栄寿堂・青墨  進誠堂・蒼純


  
★追記★
      2018年8月、上記の「青燭精」を試し磨りしました。
      3つの硯を使ったところ、いずれも大変なめらかで香り高く、
      まことに良い感じだと思いました。
      ★少し前にテレビで紹介されていた、進誠堂「1分で磨れる墨」も
      試してみました。 こちらは、なめらかというよりは サーサー、
      スースーというような擦過音を伴って、本当に早く、濃くなりました。
      この墨は、小学生が授業で使いやすいようにと開発されたそうです。
      大人の方の練習用などにも、十分お使いただけるものと思います。


       

       


   株式会社 墨運堂 ホームページ内                墨のQ&A

   

   墨と硯の関係のほか、墨に関する様々なQ&Aが掲載されています。
   
   同ページ内の「墨・和文具のお話し」とともに大変興味深く、

   面白く、参考にしていただけるページです。

                (別ウインドウで表示されます。)




3.価格

  簡単に言いますと、「材料費+人件費」です。 どれだけの原石を使って、どれだけの
  手間隙をかけたか、で決まります。
  質や量の点から、希少で高価な原石を使用したものは、高価になってしまいます。
  彫刻のあるものや蓋付きのもの、丸型や対称的な形に整えられているものなどは、
  作硯に時間がかかります。  「普通の、四角い硯」と言われるようなものはごくシンプル
  で、あまり手間が掛かっていないようにも見えますが、硬い石を手作業で直線・直角に
  加工することは 実は大変困難です。 
  良い石に、精巧な彫刻が施された硯には、それだけの値段がつくでしょう。 けれども
  手が込んでいるように見える高価な硯であっても、必ず石質(磨墨)の点で優れている
  とは限りません。 お気に入りの彫刻硯でしたら、彫刻が創作の助けになってくれるかも
  しれませんし、あまり好みでなければ、扱い難くて邪魔に感じられるかもしれません。

   
4.星・筋など

  岩石の形成過程で、鉄分などが丸く集まって白っぽく見える「星」や、ごく薄く
  堆積した砂粒が直線状に見える「筋(または金線・銀線)」ができることが
  あります。  これらは天然石の証拠であり、風景として面白いこともあります。
  しかしこれらの部分は周囲とは硬度が異なり、磨墨の際には支障となりますので、
  あまり目立つものが陸(おか・墨を磨る部分)の真ん中等にあることは、実用上
  好ましくありません。


5.大きさ

  これは言うまでもないことかと思いますが、用途に合わせてお選びください。
  ご祝儀袋に名前を書かれるくらいなら小さなもの、太筆でたくさん練習・創作を
  される方なら大きめのものを、といった風に。  大量に磨り溜めたい場合には、 
  磨った墨液を別の容器に入れてゆく、という方法もあります。
  ちょっと使うたびに大きなものを取り出して、また洗ってきちんとしまう、と
  いうことがご面倒でなければ、「大は小を兼ねる」でも大丈夫かと思います。





<付記>

硯のお手入れ法

  硯は、使い終わったら必ず水洗いしてください。 墨液がついたままにして
  おきますと、墨の成分である膠(にかわ)が鋒鋩の間で固まってしまい磨墨が
  悪くなります。  また、磨った墨液も長時間放置しておくと劣化・変質してしまい
  ます。  スポンジ等を使って流水で洗っていただければ、簡単にきれいに
  なります(墨跡が僅かに残る場合もありますが、実用上差し支えありません)。
  上記のように磨墨が悪くなった場合や、長年の使用によって陸が磨り減って
  平らでなくなった場合には、書道用品専門店などで入手できる、硯面修正用の
  砥石をご使用ください。
  洗ったあとは、よく乾かしてから箱などに入れて保管してください。


墨の磨りかた

  墨を磨る際には、手で握る部分を紙で包んでおくと、手脂などで墨が劣化する
  のを防ぐことができます。
  硯の下に布巾などを敷いておくと、安定感が増し、硯・机とも保護することが
  できます。  水滴・スポイトなどで陸に少量の水を注ぎ、ゆっくりと磨ってゆき
  ます。  墨液が濃くなってきたら、海に落とします。 これを繰り返して、必要な
  量の墨液を海にためてゆきます。
  淡墨で書かれる場合は、いったん濃く磨った墨液を、小皿などに移して水を
  加えて薄めると、濃さの調節が容易です。
  使用後は、ひび割れなどを防ぐために、水分を拭き取ってから保管してください。


墨汁の使用について

   墨汁を使うことも、悪いことではないと思っています。
  もちろん、できることなら机に向かって、心を静めながら墨を磨って
  いただきたいです。  墨の良い香りを楽しみながら作品の構想を練ったり、
  お便りする相手のお顔を思い浮かべたり。 そんな時間も書の一部、大切な
  ひとときだと思います。
  しかしながら、私自身、以前書道教室に通っていた頃には (初心者でして、
  太筆で漢字の楷書です)、限られた時間を有効に使うため墨汁を使用して
  おりました。  自作の硯を墨汁のお皿がわりにするのは けっこう情けなかった
  のですが、それでもただのお皿を使うよりは余程マシだろう、と・・・。
  そもそも硯を作る段階で、昔はすべて手作りだった工程に、種々の機械・
  工具を取り入れて、労力・時間の節約を図っている身で、人様に「墨は自分で
  磨るものだ」とも言えません。 ご都合や、お好みに合わせて、書画に
  親しんでいただければと思います。